MARK GONZALES(マーク・ゴンザレス)に影響を受けたエド・テンプルトンのスケートとアート論
アメリカ人プロスケートボーダーでアーティスト、エド・テンプルトン(Ed Templeton)の作品集。
本書に収録された作品群は、1990年から30年以上に渡って制作されたドローイングスタイルをまとめた注目すべき回顧作とも言える1冊。思春期のティーンネイジャーや若者に目を向け、それぞれの被写体特有の性格を捉えると同時に、南カリフォルニアから始まった独自のスケートボードとサーフィンのカルチャーにまつわるヴィジュアル・アイデンティティーを記録した。プロスケーター元 世界チャンピオンとして、あるいは現代アーティスト、写真家として活動する前に育った場所であるため、そこでのカルチャーにも精通している。作者の被写体はよくポートレートのように描かれ、シンプルな線でなぞられている身体に対して、顔のディテールは印象的に仕上げられている。クールで無関心に装い、そのイメージが描き出されているにも関わらず、作者はそこに尊敬と愛情を向け、若者たちの反体制的なスタイルを露見させ、それを賞賛している。編集者であり出版者、ジャーナリスト、キュレーターのキム・ハストライター(Kim Hastreiter)が序文で述べているように、作者の「隠し味は感情移入(共感)」なのである。
本作には、妻であり、コラボレーターでもある ディアナ・テンプルトン(Deanna Templeton)のセルフポートレートと二人が一緒に描かれたドローイングなど、よりパーソナルなドローイングも8点収録されている。また、時間軸ではなく場所に焦点を当てたとされる14点は、ヴィンテージホテルのステーショナリーに描かれている。作者の祖父が多くのステーショナリーを収集していたため、それを用いることで自身の人生と南カリフォルニアの文化を紐づけた。祖父母に育てられた作者は、アートと出会い触れることが「人生をとても豊かにする」と言い聞かせてくれた祖母への感謝の念として、彼女の晩年のポートレートで本書を締め括っている。
巻頭のページには、サブタイトルとして「 IATROGENIC CALAMITY」と書かれており、文字通り「医療行為によって引き起こされた病気」という意味であると作者は説明する。自身がこの言葉を気に入ったのは、自分を助けるために行おうとしている行為そのものが自分を害している、という考えを表すからであるという。作者は人類に対して深いシニシズムを持っており、何か良いことが起きたら必ず悪いことが続くという感覚を常に抱いており、大災害の中からも良いものが生まれると思う、と加えた。本書は、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの中で構想されたもので、作者の心に最も近いものが含まれている。10代のスモーカー、パンクス、不満を抱く若者、ハンティントンビーチを特徴づける壁。本書の最初に収録される作品は、1990年当時18歳の時に描いた、ディアナのヌードスケッチである。間違いなく、ディアナは作者の北極星として在る
「 他分野での活動で高い評価を得ているため見過ごされやすいのだが、事実エド・テンプルトンの作品の中心となっているのはドローイングなのだ。ペンとインクで何層にも、そしてほぼひとりでに描かれた落書きは、どんな時でもテンプルトンがアーティストとしての立ち位置として、また世界との関係性に関する自身の問題を解決するための場であった。」ー アーロン・ローズ(Aaron Rose)
-by Ed Templeton
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