「始まりの場所」からYoshitomo Naraの作品を巡る大規模個展
青森県弘前市出身の芸術家・奈良美智の個展「The Beginning Place ここから」が青森県立美術館で開催中です。
同美術館で開催された「君や 僕に ちょっと似ている」展(2012-13)から約10年ぶりの個展となる本展。東日本大震災以後、奈良は自らがよって立つ地盤を確かめるようにたびたび過去に意識を向け、自分史に関わる土地に旅をしたり、旧作を新たな眼差しで捉え直したりなど、過去との出会いを通じて奈良は「自分の時間軸に一本の幹を見つけ」ようとしています。
「子供の頃の気持ちや、思春期の高揚を決して忘れない。大人になるために忘れない。
懐古的な感傷ではない。過去を引きずるのでもない。
自分の時間軸に一本の幹を見つけたいのだ。
年月を経て、それでもずっと自分でありつづけるのだ。」-奈良美智の2013年5月日のツイートより
本展では、感性の起源(はじまりの場所)へと至る「一本の幹」を探り当てるべく設けられた5つのテーマの中で、近年の作品と共に学生時代にまでさかのぼる秀作の数々を観ることができます。
タイトルの「The Beginning Place」とは、奈良の創造の「はじまりの場所」としての「故郷」を示唆すると同時に、奈良の作品との出会いが生み出す「はじまりの場所」を意味しています。
展示は貴重な初期から2023年の作品までが展示されており、平面作品だけでなくモチーフによって異なる手法で表現された作品は作家がこれまで様々な影響を受け止め吸収したものを自由な形で生み出しています。
- 家
奈良作品にしばしば現れる「家」のモチーフの意味を初期作品の変遷をたどりながら考えます。
- 積層の時空
近年の絵画作品やドローイング等を通じて奈良作品におけるレイヤー(積層)の重要性を浮き彫りにします。
- 旅
近年の感性の起源を求める旅から生まれた多様な表現(写真、陶芸等)を紹介します。
- NO WAR
「反戦」のテーマと音楽との関係性や社会に浸透する奈良作品の力について考えます。
- ロック喫茶「33 1/3」と小さな共同体
高校時代に通い詰めたロック喫茶の店舗を再現し、奈良の創造の「はじまりの場所」の風景について考えます。
会期は2024年2月25日までとなっており、故郷の雪景色について「何もない白で覆われた世界は、自分にとって想像力の源になっている」と語る作家の原風景に想いを重ねることができる開催期間となっています。美術館に常設展示されている大型彫刻「あおもり犬」、同じく青森県出身の作家・棟方志功の作品も同時展示されたコレクション展(2024年1月28日まで)も開催中です。
FRAGILEでは奈良美智アートブックも取り扱い中ですのでそちらも是非チェックしてみてください。
[奈良美智: The Beginning Placeここから]展
会場:青森県立美術館
会期: 2023年10月14日(土)-2024年2月25日(日)
開館時間:9:30-17:00(入館は16:30まで)
青森県立美術館ホームページ
https://www.aomori-museum.jp/