音や音楽にまつわる視覚美術を巧みに操り、音楽家・視覚美術家として活躍するアメリカ・カリフォルニア出身の現代アーティストChristian Marclay(クリスチャン・マークレー)
2021年に日本初となる大規模個展を東京現代美術館で行い、日本国内でも大きな注目を集めたことは記憶に新しい。
エディ・スリマンが就任し初めて発表した『CELINE』の2019年春夏コレクション、『COMME des GARÇONS SHIRT』の2022年春夏コレクションでグラフィクデザインが使用され、現在ファッション界でも注目のアーティストである。
アメリカ・カリフォルニア州に生まれ、スイス・ジュネーブで育った彼は、異なる言語と文化圏を行き来していたために、言語ではなく視覚的な記号や音楽などの異なるコミュニケーションのスタイルに傾倒していたことから、40年以上にわたり、コラージュ、アッサンブラージュ、インスタレーション、映像、写真、絵画、版画を通して、視覚芸術のあらゆる可能性と視覚と音の現象の関係性、鑑賞者に知覚させる音を探求し続けている。
彼は1979年にニューヨークのダウンタウンシーンでターンテーブルを使用した即興の実験的なパフォーマンスを発表し、前衛音楽のシーンでミュージシャンとして知名度を上げた。一方で80年代以降は即興演奏のほかに、マイケルジャクソンやダイアナロスのレコードを組み合わせた『ボディ・ミックス』シリーズや叫び声がまるでアンサンブルで聞こえてくるような漫画をコラージュした作品『SCREAMS』など聴覚と視覚を結びつけ、鑑賞者の想像力を刺激し、鑑賞者が見ることで頭の中に音楽が生成させるというユニークな作品を生み出すようになった。
時計が写っている映画の一部を現地時間と合うように繋ぎ合わせ作り上げた24時間の映像インスタレーション『the clock』は2010年にヴェネティア・ビエンナーレ金獅子賞を受賞し、彼は世界的に有名な現代アーティストの地位を確立した。
彼はゼロからイメージを作り上げていくものではなく、音を示唆する写真や他者が製作した映像の一部、時には漫画などのファウンド・イメージ(他者の製作物)を扱う。それらをコラージュやサンプリング、エディット、ミックスすることで新たな価値を生み出していくのがマークレーの作風であり、そのユニークな作品たちは見るものの心を掴み、エディスリマンなどの最前線で活躍しているクリエーターにまで影響を与えている。
今回Christian Marclayより2022年11月から2023年2月にかけてパリの『ポンピドゥーセンター(Centre Pompidou)』で開催された展覧会に伴い刊行された作品集『CHRISTIAN MARCLAY』が入荷致しました。
本書では、反響と人気が時を経ても衰えることがない、マークレーの重要かつオープンなマルチメディア作品について深く掘り下げています。1970年代初期のパフォーマンスから、象徴的な作品として挙げられる『Guitar Drag』(2000年)、そして『All Together』(2018年)や『Subtitled』(2019年)といった新作の大規模映像インスタレーションまで、レコードとそのジャケット、あらゆるフォーマットの写真、改造楽器、映像、プリントと絵画を組み合わせた作品、オブジェ、「グラフィック・スコア(図案楽譜)」などのアッサンブラージュは、合唱的で断固として多形的な作品群の結合組織であり、絶え間なく進化し続けています。それは、我々の存在の聴覚的な次元を、文字通りのものであれ、静かに呼び起こすものであれ、常に主張し続ける実践です。
ロンドンを拠点とするデザインスタジオ「Zak Group」がデザインを手がけた本書は、翻訳家・作家のポリー・バートン(Polly Barton)、詩人のナタリー・キンターヌ(Nathalie Quintane)、美術史家のミシェル・ゴーティエ(Michel Gauthier)、ポンピドゥセンターのチーフキュレーターを務めるマルセラ・リスタ(Marcella Lista)、デザイン専門家のカトリーヌ・ド・スメット(Catherine de Smet)による新しいエッセイを集め、作者の活動に新たな視点を与えます。また、本展のキュレーターを務めたジャン=ピエール・クリキ(Jean-Pierre Criqui)による包括的な内容を語る作者との対談、クレマン・シェルー(Clément Chéroux)、デニス・クーパー(Dennis Cooper)、ジャン=ピエール・クリキ(Jean-Pierre Criqui)、ウェイン・ケステンバウム(Wayne Koestenbaum)、デイヴィッド・トゥープ(David Toop)という世界的に活躍目覚ましい作家や美術史家が書き下ろしたテキストの選集を収録するほか、美術史家のアナリサ・リマウド(Annalisa Rimmaudo)による詳細な年表も掲載しています。
様々な業界から注目を集め、今後も目を離すことのできないクリスチャン・マークレーの作品集を是非チェックしてみてください。
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hardcover
256 pages
215 x 280 mm