【反骨のハードコア精神を知る】
ロックミュージック、
そこには自由が広がり様々な思想に溢れかえっている。
“ストレート・エッジ”
この言葉は聴いたことがあるでしょうか?
それは80年代にハードコア・パンクシーンにおいて誕生した。
MINOR THREAT(マイナー・スレット)のイアン・マッケイによって提唱された思想である。
出典:Salad Days・Minor Threat
その思想は後にハードコア・パンクシーンの枠だけに留まらず、世界的に広く知れ渡り、大きな社会現象を生み出した。
まずストレート・エッジを知るに辺り、重要なのはあくまで思想であり宗教とは別物であること。そこにはある程度の自由があり一人一人の見解を尊重する考え方が備わっている。
マイナー・スレットが自身で作った曲『STRAIGHT EDGE』からそれは名付けられた。そして、『OUT OF STEP』の歌詞ではストレート・エッジの思想にまつわる基本的な三原則が歌われ、それにより確立された。
“DON’T SMOKE, DON’T DRINK, DON’T FUCK” (タバコ/ドラッグを摂取しない、酒を飲まない、フリーセックスをしない)
この三原則はイアン・マッケイがマイナー・スレットの前身となるバンドTHE TEEN IDLES(ティーン・アイドルズ)でのライブでメンバー全員が未成年ということでクラブハウスでの演奏を拒否されたことから端を発する。
話し合いの末、難なく演奏を中止を免れた彼らはその代わりにアルコール類を飲ませないということで手の甲にバツマーク(X)を書かされ、それが後のストレート・エッジの象徴となった。両手の甲にXマーク、そして両腕を胸の前でクロスさせ三つ目のクロスを作ることでXXX(トリプルX)が完成する。その三つのXは上述の三原則を意味するとして、ストレート・エッジの絶対的ポーズとなったのであります。
出典:Minor Disturbance・Teen Idles
かくしてストレート・エッジを掲げた彼らは当時「セックス、ドラッグ、ロックンロール」という不純なイメージがロック・ミュージックの潮流となっていたことに対して、真っ向から真っ直ぐな考え方で音楽を真剣に取り組む姿勢を示しました。
その真のハードコアとも言える姿勢を貫いた彼らに影響を受けたものは数知れず、その思想は波及を巻き起こし、基本三原則以外にも菜食主義やヴィーガン、ノンカフェインなどを掲げる者達も現れ、ストレート・エッジは自由度の高い思想としていまもなお多くの人達に受け継がれている。ミュージシャン以外にもCMパンクやC・J・ウィルソンなど格闘家から大リーグ選手までアスリートにも影響を与えている。
自分と向き合い、無駄な快楽を退け、純粋な気持ちで自身が求めるものに情熱を捧げる。ある意味、煩悩を払いのける僧侶のように確固たる意志を持っている。
ロックとはその者の思想を伝達するツールである。ストレート・エッジの様な硬派のスタイルも存在するということも知っておけば、深みと面白みが両方味わえるでしょう。次回はさらにヴィーガン思想についても書いてみたいと思います。