【デス・イン・ヴェガスが目指す新境地】
この世の中、アーティスト達から尊敬されるアーティストはどれほどいるだろうか?
クリエイターのRichard Fearless(リチャード・フィアレス)はその中の一人であることは間違いない。
彼は自身のプロジェクトである『DEATH IN VEGAS』(デス・イン・ヴェガス)で現在活動中である。(以下DIV)
DIVは1994年にイングランド出身のリチャード・フィアレスとスティーブ・ヘリアー(後に脱退、ティム・ホルムズが加入。)の二人によって結成された。サイケデリック・ロックにエレクトロニカ、トリップ・ホップなどを取り込んだスタイルで多大な評価を獲得し、音楽の歴史にその名を刻んだ。
90年代、そして2000年代に入り、DIVは着実にクリエイティブな方向へと歩みを進めている。毎回、アルバムをリリースするごとに予想を遥かに超える内容で、刺激的かつ意表をついたパフォーマンス要素でリスナーのみならず多方面の表現者達を魅了している。
今年にリリースした5年ぶりとなった最新作「TRANSMISSION」では、アメリカの女優/ミュージシャン/元ポルノ女優のサーシャ・グレイをゲストヴォーカルに迎え、時代を超越したアンニュイ感漂う、ダークでサイケデリックな作品を作りあげた。
現在、リチャードたった一人となり、実質のソロプロジェクトとなったDIVだが、逆に自身が求める世界観を追求したものが出来上がり、これまでにないソリッドなアプローチが可能となった。
これまで、ゲストヴォーカルにボビー・ギレスピー(Primal Scream)、イギー・ポップ、ジム・リード(The Jesus and Mary Chain)、リアム・ギャラガー、ポール・ウェラーなどを迎え、ロック色の強いイメージであったが、今回は紅一点のサーシャ・グレイを起用したことでDIVの新時代の幕開けを予感させる。
そこにはDIVのルーツであるThrobbing Gristle(以下TG)へと少しでも近づきたいという想いが感じられる。今作、サーシャ・グレイを起用した要因となった一つが、彼女もまたTGのファンであることであった。
両者を結びつけたTGの偉大さに敬意を表するかの様に今作で魅せるDIVの新たな一面はある意味、原点に近いものが感じられるかも知れない。