Top 大竹伸朗 Photo by Shimpei Yamagami

現在、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)にて「大竹伸朗展 網膜」が開催されています。
大竹は1970年代後半より作品発表を始め、ドクメンタ(ドイツ)やヴェネチア・ビエンナーレ(イタリア)など重要な国際展を経て、近年では東京国立近代美術館を皮切りに、愛媛、富山と巡回した大規模な個展まで国内外での幾多の展覧会を開催してきました。

その半世紀におよぶ活動を通じ、圧倒的な熱量が生み出した膨大かつ多様な作品の数々から、本展は〈網膜〉にフォーカスすることにより大竹の作品世界をさらに掘り下げるものです。

30 年以上の時間が蓄積された新作の数々

〈網膜〉シリーズは、1988年に制作の拠点を移した宇和島のアトリエで着想され、1990年代初頭まで集中的に制作されたあとも、他のシリーズへの展開を伴いながら制作が続けられてきました。網膜とはそもそも眼球の最奥にある、光を感受し視神経を介して脳に情報として伝える機能を担う薄い透明の膜ですが、大竹は、廃棄された露光テスト用のポラロイド・フィルムに残された光の痕跡を大きく引き伸ばし、その表面に透明の絵具としてウレタン樹脂を塗布する絵画作品のシリーズに、この名をつけました。分離している「写真像の色面」と「透明の塗膜層」の2つが私たちの網膜を介して脳内で統合され、「時間」と「記憶」を内包した新たな像として立ち現れます。現在制作中の新作の〈網膜〉でもさらなる更新が試みられる一方で、長期間放置され変質した感光剤は、そこに蓄積する時間を像として刻印し、その像を透明の塗膜層が幾重にも覆うことで、一貫して〈網膜〉が発する情景は未だ見ぬ記憶として見る者を揺さぶり続けます。

大竹伸朗 《網膜/門の前》 1989-2024年 ©Shinro Ohtake Photo by Shimpei Yamagami
大竹伸朗 《網膜/漠悸》 1989-2024年 ©Shinro Ohtake Photo by Shimpei Yamagami
大竹伸朗 《網膜/闇港》 1989-2024年 ©Shinro Ohtake Photo by Shimpei Yamagami

1988年、大竹伸朗は露光確認用に使用された後、廃棄されたポラロイド・フィルムを入手したことがきっかけとなり、〈網膜〉シリーズの着想を得て、1989年から1990年代初頭にかけて、〈網膜〉シリーズの制作に集中的に取り組みました。その後も断続的にこのシリーズの制作を続けてきましたが、大竹はアトリエに30 年以上保管してきたフィルムを用いて、本展のために新たな大型の〈網膜〉12点を制作しました。


大竹伸朗《 網膜屋/記憶濾過小屋》 2014年( ヨコハマトリエンナーレ2014での展示風景)©Shinro Ohtake Courtesy of Take Ninagawa, Tokyo / Photo by Kei Okano
新作の制作風景 Photo by Shimpei Yamagami

こうして新たに創り出された渾身の新作〈網膜〉12点に加えて、〈網膜〉に音と光を組み込んだ、高さ約3mのレリーフ状の新作《網膜/六郷》(2025)、そして1990年代初頭に制作された未発表の大型〈網膜〉をはじめとした作品群が核となり、構想時のサイズに更新した大規模インスタレーション《網膜屋/記憶濾過小屋》(2014)、2010年代半ばから続くグワッシュの連作〈網膜景〉や油彩のシリーズ〈網膜/境〉といった、「時間」や「記憶」を介して〈網膜〉と絶えず往還し続ける作品が骨格となります。本展では、さらに「眼」「フィルム」「写真」から〈網膜〉へと接続する膨大な数の作品をも取り込みながら拡がり続ける大竹の〈網膜〉世界を展観します。



大竹伸朗 《網膜/碧放射》 1989-2024年 ©Shinro Ohtake Photo by Shimpei Yamagami
大竹伸朗 《網膜/十五重塔》 1989-2024年 ©Shinro Ohtake Photo by Shimpei Yamagami

2013年以来、12年ぶりに丸亀で大竹伸朗の個展が開催されます。本展は1階エントランスから2階・3階の展示室を使った密度の高い圧巻の展示構成は、たっぷりとアーティストの世界に浸れる展覧会となっています。


展覧会概要


会期:2025年8月1日〜11月24日
会場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 3階展示室 C、2階展示室 A、1階エントランス
開館時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)
休館日:月曜(ただし9月15日、10月13日、11月3日、11月24日は開館)、9月16日(火)、10月14日(火)、11月4日(火) 
料金:一般1,500円(団体割引1,200円、市民割900円)、大学生1,000円(団体割引800円、市民割600円)、高校生以下または18歳未満・65歳以上(丸亀市内在住)・各種障害者手帳をお持ちの方と介護者1名は無料
※11月23日(日・祝)は開館記念日のため観覧料無料

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