アーティストのStephan Crasneanscki(ステファン・クラスニアンスキー)とプロデューサーのSimone Merli(シモ
ーヌ・メルリ)が率いる現代音響芸術集団Soundwalk Collective(サウンドウォーク・コレクティブ)
音の具象的かつ精神的な力を通じて物語を立ち上げ、記憶、時間、愛、喪失といったテーマを探求し、コンセプトや文学、芸術的テーマをもとに、ジャン=リュック・ゴダールやナン・ゴールディン、シャルロット・ゲンズブールなどのアーティストと長期的にコラボレーションを行う今注目の芸術集団だ。
彼らはインスタレーション、ダンス、音楽、映画と多岐にわたり、音を詩的で感触を伴う素材として扱うことで異なるメディアを結びつけ、複層的な物語を創造し、綿密なリサーチにもとづく作品を多数制作。
現代アートの大型グループ展 ドクメンタ 14(2017 年)ではラジオプロジェクト「Every Time a Ear di Soun」に楽曲を提供し、2019 年にルーヴル・アブダビでサウンドインスタレーション《Mirage》を発表。さらにナン・ゴールディンを追ったドキュメンタリー映画『美と殺戮のすべて』では劇伴を手がけ、本作品は 2022 年のベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞している。また、楽曲制作も精力的に行い、数多くのレコードをリリースしている。

「MOT Plus サウンドウォーク・コレクティヴ & パティ・スミス|コレスポンデンス」展示風景、東京都現代美術館、2025年
Photo by Kei Murata Courtesy of MODE.
そして彼らは世界的文化アイコンとして知られるアーティスト、詩人のパティスミスとの現在進行形の最新プロジェクト「CORRESPONDENCES(コレスポンデンス)」のエキシビジョンを東京都現代美術館にて4/26〜6/29まで開催している。
50年以上にわたり創作活動を続けるミュージシャン、詩人、画家、パフォーマーとしてパンクやロックにおける表現の可能性を切り開いてきたパティスミスは、近年ではインスタレーションを手がけるなど創作活動の幅を広げ、ニューヨーク近代美術館をはじめとする多くの美術館で作品が展示される現代アーティスト。80歳を目前に控えた今、パティはサウンドウォーク・コレクティヴとの協働により、新しいオーディオビジュアル表現を生み出し、フィールドレコーディングに耳をすませて書き下ろした力強い言葉は、その土地の“音の記憶”を増幅させ、わたしたちが見つめるべき世界のビジョンを提示する。
2組の創造的な共同制作は10年以上にわたって継続し、現在進行中で絶えず進化し続けるこの協働プロジェクトは、さまざまな土地の「音の記憶」を呼び起こし、芸術家や革命家、そして気候変動の継続的な影響の足跡を体現している。
ステファンが詩的な霊感や歴史的な重要性をもつ土地を訪れフィールドレコーディングによって「音の記憶」を採集し、パティがその録音との親密な対話を重ねて詩を書き下ろし、さらにそのサウンドトラックに合わせてサウンドウォーク・コレクティヴが映像を編集。こうした“往復書簡(=コレスポンデンス)”によって生まれたのが、本展の根幹を成す8つの映像《Pasolini》《Medea》《Children of Chernobyl》《The Acolyte, the Artist and Nature》《Cry of the Lost》《Prince of Anarchy》《Mass Extinction 1946-2024》《Burning 1946-2024》だ。

Photo by Kei Murata Courtesy of MODE.

Photo by Kei Murata Courtesy of MODE.

Photo by Kei Murata Courtesy of MODE.

Photo by Kei Murata Courtesy of MODE.
これらの映像は本会場に合わせて構成されたオーディオビジュアル・インスタレーションとして展示され、展示空間全体をサウンドウォーク・コレクティヴのフィールドレコーディングとサウンドデザイン、パティ・スミスの声で包み込み、観る者を合計約2時間の没入型体験へ誘う。それぞれに異なるテーマをもつ8つの映像は、複数のスクリーンに投影され、映像同士の対話や、展示内のほかのインスタレーションとの相互作用を生み出す。
「コレスポンデンス」は、チェルノブイリ原発事故や森林火災、動物の大量絶滅といったテーマを探求するとともに、アンドレイ・タルコフスキー、ジャン=リュック・ゴダール、ピエル・パオロ・パゾリーニ、ピョートル・クロポトキンといった芸術家や革命家を参照しながら、人間と自然の関係やアーティストの役割、人間の本質について問いかける。
本展の映像は、アンドレイ・タルコフスキーの『アンドレイ・ルブリョフ』や、マリア・カラスがギリシャ悲劇の王女を演じたピエル・パオロ・パゾリーニの『王女メディア』(Cinemazero 提供)、殺害されたイタリアの巨匠ピエル・パオロ・パゾリーニ最期の一日を描いたアベル・フェラーラの『パゾリーニ(原題)』といった映画の貴重な未公開映像のほか、NASAの衛星写真、研究財団TBA21-Academyとの協業により可視化した海洋データ、さらにはジャン=リュック・ゴダールの肉声を使用し、編集されており、大変貴重な鑑賞体験になるだろう。

現在当店では注目の展示「CORRESPONDENCES(コレスポンデンス)」のフライヤーを配布しておりますので、ぜひこちらも併せてお持ち帰りください。
音、映像、詩が融合された最新オーディオヴィジュアル・インスタレーションは東京都現代美術館にて2025年6月29日まで展示されているので、是非お楽しみください。

会期:2025年4月26日~6月29日
会場:東京都現代美術館
住所:東京都江東区三好4-1-1
電話番号:03-5245-4111
開館時間:10:00~18:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日
料金:一般 1800円/小学生以下 無料