ゲルハルト・リヒター ホロコーストを表現した大作の抽象画
ドイツ人画家、ゲルハルト・リヒター(Gerhard Richter)の作品集。2014年に制作された、幅2メートル、高さ2.6メートルものサイズを測る4点の大型絵画作品「ビルケナウ(Birkenau)」(「抽象画(Abstrakte Bilder)937/1–4」)は、「アウシュヴィッツ・サイクル」として知られている。この抽象画作品は、1944年、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所の囚人が、現地で執行された処刑を密かに捉えた4枚の写真に基づいている。
この4点の写真と作品の制作過程は、長年作者を悩ませた。そして、キャンバスに写し取った作品の細部を写真で収め複製することも制作メソッドにおいて欠かせないことであった。(複製の結果として、オリジナルの「ビルケナウ」にはない細い十字の線が画面を四分割する形で現れている。)ドイツ・ドレスデンの「アルベルティヌム美術館」で初めて発表された際、本作のタイトルは先述の「抽象画 937/1–4」のみであり、原寸大で絵画をデジタル写真で複製したバージョンを絵画作品の向かいに展示した。本書は、この4点の絵画サイクルに沿い生まれた1冊である。
作者は、自身のアトリエで細部を撮影して印刷し、テーブルに並べ、そこからその写真を分割した。数週間かけ、1枚の絵画につき32分割、4枚合計で128分割し、最終的に93枚の写真の断片を選んだ。その分割された93点のみが本作には収録されているが、その流れとドラマツルジー(理論・法則)は、具体的なコンセプトではなく、作者個人の選択に沿って作られている。
ビルケナウは144ページのハードカバーでFRAGILEにて発売中です!
また日本初公開「ビルケナウ」を含む個展ゲルハルト・リヒター展が東京国立近代美術館で開催中。約110点の展示で画業60年を紐解く展覧会となっています。
ゲルハルト・リヒター展
会期:2022年6月7日(火) – 10月2日(日)
休館日:月曜日 ※7月18日、9月19日は開館、7月19日(火)、9月20日(火)
時間:10:00-17:00(金・土曜は10:00-20:00)
開催場所:東京国立近代美術館