田名網敬一の初となる大規模回顧展が開催
武蔵野美術大学在学中にデザイナーとしてキャリアをスタートさせ、1975年には日本版月刊『PLAYBOY』の初代アートディレクターを務めるなど、雑誌や広告を主な舞台に日本のアンダーグラウンドなアートシーンを牽引し、Mary Quant、adidas、JUNYA WATANABE、Ground Yなどのファッションブランドや、GENERATIONS from EXILE TRIBE、八代亜紀、RADWIMPSといったミュージシャンと協働する一方で、ウルトラマンなどのキャラクターや生前交流があった赤塚不二夫とコラボレーションした作品も制作している日本人アーティスト、田名網敬一。
田名網は1960年代よりデザイナーとして培った方法論、技術を駆使し、現在に至るまで絵画、コラージュ、立体作品、アニメーション、実験映像、インスタレーションなど、ジャンルや既存のルールに捉われることなく精力的に制作を続け、美術史の文脈にとって重要な爪痕を残してきました。 本展は、現代的アーティスト像のロールモデルとも呼べる田名網の60年以上にわたる創作活動に、初公開の最新作を含む膨大な作品数で迫る、初の大規模回顧展です。
田名網は幼少期に経験した戦争の記憶とその後に触れたアメリカ大衆文化からの影響が色濃く反映された、色彩鮮やかな作品で知られています。本展は当時の資料を含めて田名網が手掛けた膨大な作品を紹介することで、これまで包括的に捉えられることがなかった、その60年以上におよぶ活動を「記憶」というテーマのもとに改めて紐解こうとするものです。
田名網は武蔵野美術大学デザイン科に入学後、篠原有司男、赤瀬川原平、荒川修作らと出会い、彼らの活動に最前線で触れながら、1957年に日本宣伝美術会主催の日宣美展で特選を受賞します。在学中からデザイナーとして仕事を依頼されるようになり、卒業後は博報堂に入社。2年ほどで退職した後は画廊での展示に固執せず、1966年にはアーティストとしての出発点ともいえる作品集『田名網敬一の肖像』を出版します。アンディ・ウォーホルの美術やデザインといったひとつのメディアに限定しない制作方法に大きな刺激を受け、自らを「イメージディレクター」と名乗るようになります。その後、シルクスクリーンによるポスター、コラージュやアニメーション、イラストレーションや絵画などの作品を精力的に手掛けるようになっていきました。
87歳となった今も旺盛な創作活動を続ける田名網の存在は、世代や国を超えたアーティスト、そしてデザイナーたちを魅了し続けており、コラボレーションを求める声は後を絶ちません。これは60年以上にわたる活動のなかで、田名網自身が常に自らの表現方法を刷新し続けてきた稀有な感性を持ったアーティストであるからだといえるでしょう。また近年、田名網は海外文化を独自に受容した戦後日本の作家としても世界的に評価が進み、ニューヨーク近代美術館(アメリカ)、ウォーカー・アート・センター(アメリカ)、シカゴ美術館(アメリカ)、M+(香港)、ハンブルガー・バーンホフ(ドイツ)にも作品が所蔵されています。
本展は多方面から注目が集まる田名網が現在まで探究を続けている、虚実が入り混じった記憶のコラージュのような作品世界を存分に体感していただける待望の機会となるでしょう。
展覧会概要
特別展「記憶の冒険 – 田名網敬一」
会期:2024年8月7日~ 2024年11月11日
休館日:毎週火曜日
会場: 国立新美術館 企画展示室1E
〒106-8558東京都港区六本木7-22-2
特設サイト: https://www.nact.jp/exhibition_special/2024/keiichitanaami/
当店では、特別展「記憶の冒険 – 田名網敬一」のフライヤーを配布しておりますので、是非こちらもお持ち帰りください。
2024年8月9日、田名網敬一さんが逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。