【芸術の対話には言葉はいらない:ソニック・ユース×リチャード・プリンス】
90年代オルタナティブ・ロックが全盛期の頃、他を寄せ付けない独自のロックスタイルで、時代が求める遥か先を行っていたSONIC YOUTH(ソニック・ユース)。
彼らが2000年に入り制作したニューヨーク三部作と言われる作品の最終部にあたるアルバム『ソニック・ナース』をリリースしたのが04年となる。
出典:SONIC YOUTH/Sonic Nurse/Geffen Records・トップ画像共に同じ
『NYC ゴースツ&フラワーズ』(00年)、『ムーレイ・ストリート』(02年)に次ぐ、第三部となった同作は前作に続きジム・オルークが5人目のメンバーとしてアルバム制作に全面参加した。アルバムのリリースも好調となり、バンドのキャリアにおいても名盤の仲間入りとなった。
そのアルバムの表紙にデザインされている絵具で描かれているナースはどことなく冷たい雰囲気と妖婉さが漂っているように思える。それはリチャード・プリンスが描いたものである。
リチャード・プリンスはアメリカを代表する現代美術家として世界的に名高いアーティストの一人として知られる。彼は広告や写真など既存の作品を基に、自身のアートワークを加えるシミュレーショニズム(アプロプリエーション・アート)と呼ばれる手法でシンディ・シャーマンやジェフ・クーンズらと並び、商業的な姿勢に反する前衛的な表現で旋風を巻き起こした。
音楽作品で言うところのサンプリングに近いその手法は、度々、盗用疑惑や無断使用疑惑(一般人の写真も作品に使用)などで訴えられる事もしばしば。
そんな破天荒とも言える彼は、2005年のアートオークションで当時、史上初となる金額で作品が落札された。なんと、その額1億円以上となったのであります。たった一枚の写真がそこほどまでに高値で取引されるほど彼は偉大な存在として認知された。
その以前の2003年には、ロマンス小説のカバーをコラージュしたシリーズ作品「Nurse paintings」を発表。表紙の上からインクジェットプリンタで下地を作り、その上から絵具を塗る独特なスタイルにソニック・ユースは感銘を受けたのであります。
そのイメージは音楽の粋を飛び越え、2008年に無類のアート好きとしても知られるマーク・ジェイコブスが当時デザイナーを務めていたルイ・ヴィトンの08春夏コレクションにてそれをオマージュしたショーを展開。ナースルックに身を包んだモデルがランウェイを歩く姿は大きな話題を呼びました。
伝統的なモノグラムバッグにも彼の作品のひとつである。ジョークワードが落とし込まれ物議を醸し出しました。
最近ではインスタグラムにアップされた写真を用いた作品集「New Portraits」を発表するなど話題は事欠かせない。
時代の進化も我が手中に収める稀代のアーティスト、リチャード・プリンスはこれからも話題を生み出し続けていくことだろう。
近日、Sonic Youthのアイテムも入荷予定となっているのでお楽しみに!