【ありのままに自然を還す】

前回、ハードコア・パンクシーンから派生した思想”ストレート・エッジ”について述べました。今回はさらにそこから深く掘り下げ”ヴィーガン”という思想について迫りたいと思います。

まず、おさらいとしてストレート・エッジには基本原則として3つの規則があります。タバコ/ドラッグ、アルコール類、フリーセックス、それら3つの行いを断固としてしないといった己に懸けた強い意志をもって掲げられたものになります。詳しくは前回の記事をご参照下さい。

そのストレート・エッジの中にはヴィーガニズム(ヴィーガン)と言われる完全菜食の生活様式を行なう人達がいます。ヴィーガンとはよくベジタリアンと混合されがちですが、ヴィーガンはベジタリアンの中でもさらに厳格に値する人達を差します。それは乳製品、蜂蜜等の動物性食品の摂取も一切行なわず、中には革や毛皮などの動物製品も身につけないといった規律を掲げている人達もいます。有名人で名を挙げると秋田昌美(MERZBOW)、灰野敬二、ナタリー・ポートマンなどがその主義を一貫して貫いています。

近年では海外のセレブ達が実践したマクロビオティックなどのダイエット法でもヴィーガンという言葉が取り上げられ話題となりました。本来、ヴィーガンを求めるうえでその人達には様々な理由があります。中でも動物愛護や地球環境保護を行なっている人達は生粋のヴィーガンにあたります。

これから記載する文章は秋田昌美氏が出版した「わたしの菜食生活」のあとがきに記載されたものを抜粋したものになります。自身のブログにてそれ以外の事柄についても公開されているのでぜひそちらも重ねてご覧下さい。

“人間が食べる肉は、穀物や野菜に比べてはるかに大量の無駄なエネルギーを必要とします。地球上で飼育されている牛の数は13億頭といわれていますが、これらの牛を育てるために地球上の3分の1の穀物と大量の水、そして広大な土地が費やされています。南米をはじめ後進国では、先進国へ輸出する牛肉の生産に必要な放牧地を開発するため、大規模な森林破壊が進行しています。もともと多様な動植物の宝庫である森林が、単一栽培の牧草地に替わることで生物多様性が大幅に失われます。やがて牧草地は不毛の砂漠に変ります。今ではサハラ砂漠やゴビ砂漠は、過剰牧畜による人工的砂漠であると考えられています。このように過剰牧畜は明らかに生態系破壊の原因となっているのです。さらにメタンは地球温暖化の原因の一つと言われていますが、家畜牛の腸から放出されるメタンは世界の年間放出量の16%をも占めています。肉食とそれを供給する家畜制度が莫大な量のエネルギーを浪費しており、地球規模での環境破壊の大きな要因であることは歴然としています。しかし、おかしいのは環境問題を語る人々の多くが畜産の問題には触れず、また依然として肉食をやめようとしないことです。肉食の問題を棚上げにしてエコロジーを説くのは偽善でしかありません。ただの金儲けを目的とした餌として「エコロジー」を標榜する企業家が多すぎます。最近「環境に優しいマンション」というような宣伝を新聞などでよく目にしますが、マンション建設自体が環境破壊であれば何の意味もありません。もっと根本的なところから改革しなければならないと思います。人間たちの意識の改革が必要です。人間が地球の独裁者となっている人間中心主義の考え方を捨てなければならないと思います。人間中心主義とは他の種に対する差別です。これは「種差別」(スピーシズム)と呼びます。「種差別」は西欧文化の根底にあるユダヤ・キリスト教的な論理です。もともと家畜制度の元凶はそこにあったのです。

『聖書』にはこう書かれています。「神はそれぞれの地の獣、それぞれの家畜、それぞれの地を這うものを造られた。神はこれを見て、良しとされた」「神は言われた。『我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう。そして海の魚、空の鳥、家畜、地を這うものすべてを支配させよう』」(「創世記」創造の第五日日本聖書研究会より)つまり世界創造の最初から、動物は「野生のもの」と「家畜になるもの」に分類され、それらすべての生物を支配する権限が人間に与えられたと言うのです。

何という人間中心主義の論理でしょう。人間は動物たちを「家畜」として奴隷化し、酷使し、搾取しています。これは動物に対する差別です。

西洋の社会学では、動物は古くから次の三種類に区分されています。(1)害獣(2)家畜(3)ペット(コンパニオン・アニマル)つまりペット以外の動物は、人間の食料として、または有害無益であるという理由で殺されます。
人間は動物たちを自分勝手な理由で殺しています。先日、テレビのニュース番組でこんなシーンを観ました。魚の養殖場に子グマが現れ魚を捕って食べたので、撃ち殺しました。すると、子グマを失った母親グマが凶暴化しました。人間を襲うおそれがあるからとして、母グマも地元のハンターの手で撃ち殺されました。食べるものがなくお腹をすかせた子グマが里に下りてきて、魚を捕って食べるのはごく自然なことです。人間側は「クマのせいで~円相当の損害を受けた」と言ってクマを加害者扱いし、自分の生活がかかっているのだから殺すのはやむをえないと主張します。しかしそれは、クマの住む森を奪ってクマが里に下りてくる原因を作った事実を棚上げにした、人間側の勝手な理由に過ぎません。しかも、他の対応策を検討することなく、撃ち殺してしまうのです。はたして人間社会で泥棒を殺すことが許されるでしょうか。そもそもクマは泥棒ではありません。クマには何の罪もないのです。”

“動物たちは人間により、様々な目的で殺されています。動物実験で殺され、食肉用に殺され、毛皮を剥ぐために殺されています。

動物の最大の敵は人間であると言えます。しかし、動物たちは人間に抗議するでしょうか。復讐するでしょうか。彼らはそのようなことをしようともしないし、またその能力もありません。
だから、動物の権利の保護を主張する人々は、彼らに代わって彼らの声となり力となり、動物を虐待し殺害する人間たちとその社会のシステムに対抗します。したがって動物の権利をめぐる戦いは、動物の代理人とその他の人間との間の戦いということになります。

SARS、BSE、鳥インフルエンザと、今や畜産はきわめてリスクの高い行為になりつつあります。そもそも劣悪な家畜制度から生まれた人為的な病である疑いが濃厚なそれらの責任を、人間たちは全て動物に転嫁しています。仮に新型インフルエンザが人間界に蔓延すれば何百万人の死者がでる、と言われていますが、その犠牲をはらったとしても毎日大量に殺されているニワトリたちへの謝罪としてはけして折り合う数とはいえないでしょう。今、肉食を止めることこそ最優先の課題だと思います。(2005年)”

という事柄からも分かる通り、それらにおいてヴィーガンとは密接な関係があるのであります。すなわち人間中心主義となってしまった時代においてそれを見つめ直すうえでも必要なことをヴィーガンの人達は強い意志をもって実践しているのでしょう。

日本ではまだまだ馴染みは薄く、欧米諸国に比べその点においての認識は後進国とされています。豊かな暮らしがいつの間にか盲点となり気付かない故に、そういった破壊へと手助けしてしまっていたのかもしれません。私利私欲で生きる人間の愚かさをヴィーガンから学べる様な気がします。

先日とあるニュースでこう言った事柄が話題となりました。

日本人の「米離れ」が深刻…。

特に若年層において、それは顕著にあらわれているとのこと。

すなわち和食離れが急速に進んでいるのであります。

元来、日本人は140年前の明治維新の頃まではベジタリアンに近い食事を摂っていました。祝い事の時のみ魚を摂取していたものの、それ以外では米飯に一汁一菜の食事でありました。

このまま時が進めば、そのものから大きくかけ離れ、ますます事態は深刻化していくでしょう。そうなる前に一人一人が意識を持つことで正しき共存が生まれ、本当の豊かさが生まれるのではないかと思います。

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